「聖戦記 エルナサーガ2」感想/第4巻分
04年2月号〜04年8月号掲載。基本的に雑誌掲載時の感想。

4757513046聖戦記エルナサーガ2 4巻 (4)
堤 抄子

スクウェア・エニックス 2004-10-27
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単行本収録時のエラッタ
  • 冒頭にヴァルとスヴァンとの思い出を4P書き足し。そこから21話連載分へ繋がる。これが11月号後書きでの「4巻には書き下ろしあります」かと思われる。
  • 見返しの作者コメントによると「エルナ2の主人公たちはかつての英雄たちよりも幼く軽い感じです」との事。やはり自覚して描写しているらしい。エルナ1のノリで読むのは間違っているという事か。
  • 目次ページのカラーはバルドゥル。正直「求道者」と言う印象を持つイラストで、毒気がなくて、意外。


第27話「聖堂の闇」

 おいおい。一筋の希望すら見えない話だったな。
 魔道書は奪われ父王も害され(死亡確認までは至ってないか)、エルナはさらわれヒーローは出動できず…聖修道会の思惑通りに動いてしまってるじゃないか。ここからどうやって盛り返すんだろう。

 エストベリのキャラの掘り下げ。飄々と生きている人間なんだな。
 自分がやってる事は明らかに聖修道会を利する行為であり、聖修道会が世の中を支配したら「信者にしか生存を許さないでしょう」とまで言われている。
 のに「悔いのないよう最後の日まで思う存分遊んで暮らします」…金を稼ぐ事に執心している印象だが、その金も聖修道会が勝った日には全く意味を成さなくなるのにな。
 しかも彼はそれを判っている。「率直俺は俗世が好きなんです」と言う。が、やっている事はビジネスとは言え、「俗世の敵」である聖修道会の味方。生きる事に執心してないって事か。聖修道会が勝つにせよ、それは自分が元気なうちに実現する訳ないと踏んでるのかなあ。
 だから、ヴァルが殺されそうになった時に「バランスを取っただけさ」と信徒を射殺したりしたんかな。あっさりと聖修道会に勝たれたら自分のビジネスに旨みがなくなるし、もっと俗世を楽しんでいたい。
 そういう意味では、彼が「俗世がいつまで続くか」コントロールしようとしているようであり、聖修道会の上を行って世の中を支配しようとしているのかもしれないな。
 そんな印象があるから、「エストベリ人外説」を未だに捨てきれない俺ですよ。ソーロッドみたいな精霊とかな。

 エストベリは「魔法は生まれつきの能力である程度決まる、でも今の世は平等」と言う。それに対してバルドゥルは「今の世は平等ですか?絶望した人間が聖修道会にやってくる」と言う。
 …この辺誤解されたらいやんだが、エストベリは機会の平等を言い、バルドゥルは結果の平等を願っている(のか、詭弁と知りつつ信者救済の言い訳にしている)ってことか。
 あの映像作家が成功する要素はあった、少なくとも映像作品を制作して売り込んだりする事に関して障害はなかっただろう。機会の平等はあった。しかし、成功できなかった。結果は不平等だった。それって当たり前のことだろう。努力した、しなかった、才能があった、才能があったのに生かせなかった…それらをひっくるめて「全ての人間に平等な結果」など訪れてたまるか。共産主義かよ。
 でもまあ、世の中にはどうしようもない事がある。そのどうしようもない矛盾を埋めてくれるのが宗教なんだけどさ。心の救済のために在るもんだろう。
 その宗教が暴力装置になってしまったから、こんな風に騒乱になる訳で…現状の中東とかオウムとか。

 エルナ、狂戦士の正体を知る。
 …うわあ。24話感想で何となくぼやいた事がここで回収されたよ。これって伏線だったのか…そんな事考えてなかったよアレ書いた段階では。マジで何となく思いついただけだったよ。
 その事実に激しく動揺して魔法を撃てないエルナ。その一瞬の躊躇を突かれ、狂戦士にさらわれる…。

 飛んでる最中にヴァルやリョートやその他の一派に撃墜されて救出されるか、それとも一旦聖修道会の手に落ちるのかはまだ判りません。前者は現状八方塞だから望み薄かな。
 ともかくさらわれから落ち着いてから、今まで人間を殺してきた事実を考え込むんだろう。そこから彼女がどんな結論を導き出すのかが見物だ。「やはり人間は殺せない」のか、それとも「他の誰かの平穏な幸せを守るために、それを壊す人間は殺すしかない」となってしまうのか。
 「もし敵と味方どちらかの命を救わなければならないとするならば、エルナはどちらも救おうとするだろう。それが彼女だ」とは、エイリークの初代エルナを評する言葉ですが…そして初代エルナは最後までその姿勢を貫いたように思えるが、終盤の狂戦士連発に関してはどうなんだろうな…人間殺してる自覚はあったようだが最早状況に流されてる印象がある。
 今度のエルナも初代エルナみたいな行動になるんかな。同じようなパターンに持ち込まれた以上、それを意識してしまう。

 ベリエルと教皇。
 って、やっぱり不義の子ですかーーーーーーーーーー!!
 23話感想の際にもちょっと引っかかってた発言だったが、アレは宗教指導者としての発言だとも思えたので(「信仰する神に対する息子」みたいな感じ)確信はしてませんでした。
 元々は教皇を恨んで暗殺しに来たんですか。それを飼ってみたんですか。親子の対立だなあと言う印象が強くなってきたので、ベリエルの「今なら聖修道会に信者が流れる理由が判る」発言はどうかと思う。

 最初に書いたように、主人公サイドとしてはかなりどん底の状況で次回に続く。さあここからどうするのかな。
 …単行本としてはこの辺で切れるんだろうか。また微妙な所で。

第26話「王の選択」

 ありゃ、マジでフェイクだったよ。
 先月号感想での直感通りだったか。犯人が元「映像作家」てのは、ここで生きる伏線だった訳ね。

 今回の話。王様が悩み、結論を出す。自らが進むべき道を見つける。
 その間主人公はすかーっと寝てるだけ。へたれ従者ふたりが上手い具合に立ち回ったのに、何て回だ。

 王の侍従ベルクマンがその立場にありながら、聖修道会というカルトに転んだ動機。それは王の先導車がある少年を事故死に追いやった事。その子は後にベルクマンに引き取られる予定だった…。
 ……と言いますかですね。これって結構なスキャンダルだと思いませんかお客さん。報道で取り上げられてもおかしくない出来事じゃないかなあ。少なくとも、三面記事。
 いや、「ベルクマン夫妻に引き取られる=王室関係者の家族になる予定だった子を事故死に追いやった」と言う事実は知られてないとしても、普通に「王の先導車が子供を事故死させた」ってのはさあ。
 いくら「子供の不注意による過失」扱いにされても、車対自転車が0:10の責任になる可能性はすげー低いだろ。運転手のいくらかの責任は問われるはずだ。王室を攻撃したい勢力は(聖修道会系以外にも)存在するだろうし。特に「1年前」の事故だしな。ここ最近の話。エルナスが物騒になった、ここ最近。

 それとも、結構な騒動になっただろうに…それでも王の耳には届かなかった。「陛下の御心をわずらわせる事ではないという事ですよ」なのか。
 王族の家庭に普通にTVやラジオがあって、普通の家庭のように情報が得られるような状況なら、そんな情報規制は意味ないんだろうけどさ。現実の王室ってどうなんでしょうね。エルナスってのはどの位開かれた王室なのかな。想像し易いのはやはり日本の皇室だけど、果たして彼らは普通にTVを見れる立場なのかな…。
 「マスコミ報道すらされなかった」よりも「報道されたのに王室に対しては徹底的に情報規制がなされた」と言うオチの方が、「無風で無人の宮殿に君臨する王よ」と言う皮肉が奮うわな。つっつーはどちらを指しているのでしょうか。

 聖修道会がエルナスの魔道書を狙う理由は熱核雷弾の呪文のため…なのかな。どうやら当初予想していた(と言うかそんな風に見えていた)「魔道書収集による魔法コンプリート」ではないようです。コンプリートは手段でしかなく、目的は熱核雷弾と。
 熱核雷弾は、現実の核兵器と同じ能力を持つ。…効果範囲は何キロ四方ですかね。示威目的とするなら、普通に実用化出来ている(と言われる)トランクひとつの小型核程度の威力でも充分だよな。
 ともかく核を保有する事により、聖修道会は脅迫行為を含む発言力は増す。つーかそうなりゃ軍事的には国家レベルですか?中東ゲリラ並ですなあ。
 しかし魔道書だけでは駄目だ。核兵器の製造法が判っても、材料や技術力がなければ意味がないのと同じ事で。それを満たすのが、エルナの魔法力。だからバルドゥルは「エルナには我が陣営に来て頂きます」と言い張るのか。ここで伏線回収終了。

 ところが新たな謎が浮上する。
 聖修道会の当面の目的が核保有ならば、その先にある「目的」とは?
 幼稚園バス襲うような悪の秘密結社じゃあるまいに、保有そのものが目的な訳がないだろう。…いや今まで魔道書コンプリートが目的だと思ってたけどさ。
 核保有で国家を恫喝して、何かをやろうとしているのかな。「神の再臨」のサポート?再臨し易い状況を作らせる?
 確かに今の状況じゃあ「外宇宙から宇宙船が着くから」とか言われても信じられませんし。いくら連中の科学力が凄いとは言え、サポートはあるに越した事ないよなあ。
 また、エルナスと敵対しているのはあくまでも魔道書云々と言う理由のみであって、神の再臨と言う目標においては特に敵ではないのか?でもここまでドンパチやってしまったら、魔道書手に入れたからと言って「もう敵じゃないんですよ」と言う言い訳はなりたたんがな。

 エルナの映像はフェイクでした。それをあっさり見破った訳ではないでしょうが、エルナなしでも狂戦士を倒す事は可能だったかへたれーず。
 ガスでエルナが眠って倒れた映像を血みどろCG処理してフェイク画像完了。ってその手のCG処理って違和感なく仕上げるには結構大変だと思うんだが。作業早いな。解像度が低い動画なのかね。それとも動転した国王を騙せたら、それが稚拙な代物でも結果オーライと言う結論か。

 話の本筋、と言うかエルナ2自体の本筋に戻りますが。
 今回のエルナは、現状のエルナス王室に対して「たくさんの人を不幸にするのに何故何もしないの?」みたいな疑問を抱いているみたいですね。自分には力があるから、王室を飛び出して聖修道会を止める。そう言う目標。
 荒んだ社会情勢であっても「微笑んで国民の支えになる」と言う意味合いで王室の価値はあるだろうから、もうちょっと視野は広く持って貰いたいもんだと思ったり。まだ女子高生だから、世界の広さは知らないか。なまじ目に見えた力を持ち得ている分、自分が特別に思えて仕方ないんだろうしね。

 「私が死んでも、その意思を継ぐ人がいるから。その意思が途切れた時に、私は死んだと思って悲しんで」…つまり自分は礎でしかないと思っているって事か。つい最近まで普通の女子高生だったのに、凄い成長だな。
 「ヴァルがいてくれたら、いつでも日常に戻れる気がする」と、初めて魔法を使う際に言っていたけれども、この分ではなかなか日常には戻ってこれそうにないな。一旦非日常に浸かってしまった以上、世の中が平和になったとしてもそう簡単にも。実際「お姫様」なのだから、平和になったらいよいよ姫としての立場が重要になるのだろうし。
 …この「戦争」の中で王室が解体したらどうしようかとちょっと思った。まさかなあ…王室だって「平穏な日常」のひとつなのだから、犠牲にしていいモノじゃないし。

 一旦よろめいて魔道書を渡しそうになった王様だが、結局「エルナは死なない」と断言して魔道書を奪い取る。この場合の「死なない」とは「エルナという存在が死んでも、その意思は受け継がれていく」と言う意味合いなのだが、実は血まみれ映像はフェイクであり、マジでエルナは死なないのだった。
 …この結果オーライっぷりにはヴァルを思い出させて貰った。王様……もしかしてあの手のへたれ属性持ちですか?ヴァルが謁見したら、何故か親近感を覚えたりしませんか。間違った方向で和んでしまったラストでした。
 でも、エルナサイドでも王様サイドでも、狂戦士発動みたいですけどね。エルナの方はすかーっと眠ってる彼女が起きたら何とかなるけど、王様はなあ…まさかここで死亡フラグとか言わないよな。王様がどれだけの魔法を知っているかによるけど、治癒程度で「これを解読するとは」と驚いていた位だから、非常に不安だ。

第25話「迷宮」

 やっと話数が正常化しました。編集よくやった。いや当然の仕事だが。

 リョートとヴァルがお役立ち度を張り合う序盤。知識のヴァルと戦闘能力のリョート。ふたり合わせてエルナをサポートして完璧な感じなんだが。リョートもちゃんと気付いてるようだがね。「姫様を任せるんだからな」とか言うし。
 ヴァルは「エルナサーガ」を暗記してるんかね。我々の世界で言うと「イリアス」やら「古事記」やらを暗誦出来るようなもんか。確かにヲタ知識だ。
 そのヴァルがエルナに魔法を指示し、リョートに狂戦士の倒し方も指示する。戦略上も考えられる立場になるんかね。軍師的立場は、そういう教育を受けているリョートがやるもんかと思ってたんですが…狂戦士相手だとヴァルの知識に一日の長があるか。

 魔法を巡る思惑。
 エルナスは「魔法は封印すべきだ」と言う。それは判っている立場。
 しかし聖修道会側も「魔法を使う」割には、その魔法をマスコミ相手に見せようとはしない。「本当の事なんですから」とエストベリが言うのに「何だかおかげがない感じになっちゃうじゃないですか」と。魔法を振るうくせに、神秘性を保とうとする立場。マスコミに検証させて科学的に解明されると、それは最早「宗教」じゃなくなるって事か?
 バルドゥルは神の再臨を目指す訳だが、宗教団体という形態がそれには好都合って事かな。盲信させてる方がいいのかな。
 てか、なら「魔道書の公開要求」ってのは、一般人にとっては本当に「遺物公開」に過ぎないんだな。「魔法と言う素晴らしい力を一般人に公開しろ」と言う要求ではないんだな…。魔道書の力を彼らの一手に引き受ける、そんな野望な訳だ。うわーい悪役ー。

 対して、ヴァルは「こんな素晴らしい力を隠していいのかな」と、魔法を公開する分には構わないようだ。
 この世界での「魔法」は古代のオーバーテクノロジーと言える。科学ではない、別の大いなる力。掌相と呪文さえあれば、ある程度の魔法は一般人でも使える。
 治癒魔法とか便利だよなー。例え治癒一発で魔法使い切るような状況でも、あるとないでは大違いだろう。一般人では治せる傷にも限界はあるんだろうけど。せいぜい包丁で指切った程度にしても、便利。
 そんな程度でも、魔法の素養がある人間は、他のタレント持ち同様にある程度いるんだろうし。魔法が日常化したら「魔法文明の復活だ」になるだろうな。
 多分、ソーロッドもそれを狙っている…のか?
 聖修道会が神を再臨させた場合、魔法でそれを迎え撃つように仕向けたいのか?何せ相手はエクソダス出来る程の科学技術の持ち主なんだから、現在のこの星の科学技術では圧倒的に敵わないだろうしな。対して魔法なら、エルナみたいな人材が何人かいれば何とかなるかもしれないと。神側の魔法量も(同じ「人類」ならば)そんなに変わらんだろうしな。

 エルナス国王は、ある程度動揺している。首相や対策本部長に連絡を取ろうとする(思い止まるが)。…やはり子供出されると、親は弱いか。それなりに厳格な国王であるはずなのに。
 「魔法をあからさまに言う訳にはいかない」と内閣への意見を思い止まる辺り、普通の政治家にとっても魔道書は遺物なのかね。列車テロに遭った上院議員は、魔道書の真の価値を判っていたような判っていないような感じだったが…。

 で、犯人。
 本当にまんま「カルトに逝っちゃった若者」ですな。
 社会に居場所がなくて、カルトの人間にちょっと優しくして貰ったからってそれに依存してしまった大きな子供。自分の(あるのかないのか判らん)才能を認めてくれない社会を「こんな社会間違ってるんだ」と敵視してしまったガキ。オウムとかアレフとかを思い出させる男だ。
 まあ、現状の社会に適応できない人間ってのは絶対出てくるもんだと思ってるので(私見)、そういう人間に対する受け皿は必要だと思うよ。キリスト教だってイスラムだって、始まりはそんな感じなのだから。
 但し、「現状の社会」に住む人間にとってしてみたら、そんな宗教団体の攻撃性には迎え撃つ姿勢を取らなきゃならない訳だが。ここでのエルナスみたいにな。

 ラスト、霧に包まれた部屋で、エルナが血にまみれて倒れる映像。それに驚愕する国王。
 そして「すぐに処置すれば助かりますよ。我らに魔道書を下さればね…」と言ってのける、執事。
 エルナス王家に関わる人間にまで、聖修道会の息がかかっていた。発覚したなら凄まじい大事件だろう。一般的には聖修道会は「テロやってる噂」があるにせよ、普通の新興宗教団体だ。しかし仮にも王家に関わる人間が国教でもない宗教に染まってるのは駄目だろう…。
 さて、どうなる。ここで肉親の情に流されて、本当にテロに屈するか。

 …つーか、アレ本物の映像か?ちょっと疑ってしまった。
 まあ「最強の魔法少女を倒すには…」と何らかの操作をやってるから、本当にエルナを血まみれにしたのかもしれんけど。魔法では太刀打ちできないから、銃器か何かで対処か?
 銃弾ってクレトゥスで防げたっけ…振るわれる剣はハーレク戦の時にシャールヴィが防いだりしてたっけなあ…。

第24話「侵入」

 えーと。トビラの話数が戻ったのはいいんだが、戻り過ぎだ。「23話」て。編集仕事しろ。
 「正当」修道会も普通に「正統」修道会に戻ってますね。やはりミスだったのかよ。

 で、大使館占領事件。…現実とシンクロするなあ。
 今度のテロリストはまた別の意味でヤバイ奴ですな。劇場型犯罪って奴か。全てを記録して編集して楽しむんですかね。でもきちんと魔法は使えるようだ。…って独りで魔法連発しまくってたら魔法が切れるんじゃなかろうか。

 今回の聖修道会の作戦。「ミミズで魚を釣る」。つまり大使館とそこで働いてる人は「ミミズ」で、彼らを助けにやってきたエルナ一行が「魚」。「その魚を使ってもっとでっかい魚を釣る」…つまりエルナ達を更に人質にして、エルナスの魔道書の閲覧要求。そう言う事か。
 前回の列車テロも「人質はどうなってもいいんだな!?」「そう、エルナスがそう簡単に要求を飲むとは思っていない。まずはエルナスを追い込むのだ」と言う事でしたな。人質事件を起こしてエルナスの対応を待たずに人質殺害、そうする事で世論が傾くのを待つ…そんな感じか。全くもって現実とシンクロしてくる事で。微妙に厭な感じだ。
 そして犯行声明は直に国王の元へ送られる。マスコミや政府などを経由する事無く、直接エルナの「親」の元へ。
 なかなかに厭らしいやり方ですな。

 外でおたつく警官隊。彼らはグードランドの支配下にある。軍の出動要請を考えるも、領事館内は治外法権だからエルナス主権だもんな。そら調整は難航するだろうな。
 しかし「軍と警察では規定も訓練も違う。人質の無事を優先するには…」と。
 何ですかこの世界の軍の対テロ方針はロシア状態なんですか。「運がよければ人質生きてるだろ、とにかくテロリスト殲滅が第一だ」といきなりガス弾打ち込んで、気付いた時には人質の半分が死んでたりするんですか。
 「人質よりもテロ撲滅ですか。エルナスはそれを選ぶかも…」と言う警官も。エルナスはテロと戦う国家だと。そう言う認識なのか。
 …だからこそ、政府経由で犯行声明伝えたら、「ミミズ」や「魚」が殺される恐れがあるんかな。「親」の情念に訴えるべく、国王に直接伝えたんだろうな。

 ともかく、エルナの理論と聖修道会の理論は相変わらず対立する。彼らはどちらも「世界のために戦っている」と言う。
 聖修道会は「世界のために犠牲はやむをえない」と言い切る。自分達の「正義」の実現のためには犠牲は付き物で、邪魔する連中を犠牲にする事も厭わない。
 エルナは「世界のために戦うと決めたのに、そのために世界の誰かを犠牲にしちゃ駄目だよ」と言う。それはスヴァンを人質に取られた時と同じ事。「世界に只の人なんていない」…ある人は絶対に誰かの特別な人であると。列車テロの際も同じ事。あくまでも姫の安全のみを確保しようとするリョートに対し「それでいいの?」…自分達だけが生き残ればいいのかと。

 これが、今回のエルナの行動様式なんだろうな。
 今回の聖修道会の主犯は「妙な理屈を言う」と、彼女の様式を理解不能みたいですけど。自分が信じた正義に邁進出来る、狂信者だからこそテロに走れるのだろうか。
 …なーんかもう、何度も言うけど、現実とシンクロする考えばかり浮かんでくるよ。

 そういや、エルナって魔法どっかん娘への道を着実に歩んでるけど、殺人を犯した事は未だにないんじゃないか?
 舞踏会の時に爆殺した狂戦士は、バケモンと認定してノーカウントとして。大体彼女はまだあの「バケモン」がどんな風に作られるのか(つまり元は人間なのを)知らない訳だし。

 聖剣を振るって死んだ聖修道会のテロリストに対しても、その死にショックを受けた。リョートに慰められても納得出来てない。
 「世界の誰かを犠牲にしないために」、その誰かを殺そうとする聖修道会のテロリストを、彼女は殺せるんだろうか。テロリストにだって家族はあるだろう。聖修道会に走られて残された家族は彼の事を待っているかもしれない。或いはまさか彼がテロに手を染めているなんて知らないかもしれない。
 展開が現実に即してくるなら、テロリスト側も人間だって事を示してくる…のかな。所詮漫画なら、そこまでやらんかな。
 初代エルナのように「アーサトゥアルの戦争を牽引するヴァーリ討つべし」てな論議になった際に只独り「もし彼に家族がいたなら…その人は悲しむでしょうね」と言えるような展開に持ち込めるのかな。何となく興味が沸いて来た。

 そんなこんなで今回の感想終了。
 次号以降の展開としては、エルナス側がどう動くか気になる。国王は親心から心配するかもしれないが、厳格な国王だろうから敢えてテロ撲滅推進かもしれない。或いはエルナを助けたくとも、女王曰く「私達のやるべき事は議会が決定します」なのだから、思うように国は動かせないかもしれない。
 だから仮にミミズで魚捕まえても、更にでかい魚を釣るにはまだ足りないと思うんだけどなあ…。聖修道会側にもう一押しある事を期待したい。
 ま、「魚」であるエルナ達が簡単に捕まるとは思えんのだが。彼女対策として色々と厭らしい仕掛けを施している事もまた期待。何せ劇場型犯罪者だからな。

第23話「出撃」

 えーと。トビラでは第32話とか書かれてたんですが、9話分は真理に持ってかれたんでしょうか。
 ついでに言うと「単行本3巻好評発売中!」と言われて、思わず書店内を探してしまったのは俺だけではないと思う。確かに今月号が書店に並んでる間に3巻出るけどさあ…。
 これらに限らず、今回はミスが多いんだよな。全て編集のミスだと思うんですけど。

 リョートが前回全く登場しなかった訳が判りました。彼は大聖堂にいなかったんですね。エルナから離れた所から彼女を守る事にした訳ですね。あまりに近くにいたために、出会う以前から抱いていた恋心が成長してしまい、あのような事態を招いてしまったと、彼はそう結論付けたんでしょうか。
 グラサン装備で再登場と言うのは「あまり御目を合わせ申し上げないほうがよいかと…」だからなんでしょうか。完全に一歩引いた形での付き合いをするつもりみたいですね。

 そしてあの竜再登場。
 エルナスに隠してたんかい。そしてちゃんと治療してたんかい。
 リョートに従うように飼い慣らしておいた…んだろうな。こいつ、竜化した後はもう「聖修道会の一員」と言う意識は消えてしまっているのかね。「竜」と言う獣になってしまったのか。だから今までの敵側に乗りこなされても構わない、敵味方を判断出来る知性はないって事か。
 エルナがこの竜に「シッポって名前つけていい?」と言う案は承認されたんでしょうか。緊迫感がない…。それに可愛いって…エルナの美的感覚が良く判りません。でっかい犬みたいなおっかないけど可愛いみたいな感覚なんだろうか。

 舞台は変わってベリエルと正統修道会の法王との会話。
 今回の法王は完全なリアリストのようです。「エルナ姫達を匿って、観光客が溢れる大聖堂をテロ対象とするなんて言語道断」と言う事ですから。
 「特務機関が工作して双方の力を調整するのです」とまで言い切る。双方とはつまり、エルナスと聖修道会だよな。どちらの力が大きくなってもまずいって事か。エルナスが聖修道会を圧倒し始めた所で、聖修道会が自暴自棄のテロやらかしたら一緒だもんな。正に「不必要なリスクを負う訳にはいきません」だ。
 グードランドの捜査当局からもヴァル捜索の捜査依頼を寄越してきている。彼らを匿っていると知れたら国際問題になる…「1」の頃にもこういう展開あったよなー。あの時は結局アースムンドが「いかなる理由があっても神の家に逃げ込んだ者を容易く引き渡す訳にはいくまいな」とアーサトゥアルの追っ手を拒絶しましたが。今回は法王自身が捜査に協力すると表明してるっぽいので、その手は使えませんがね。
 で、さりげなく「ベリエル、息子よ」と爆弾発言。
 …法王に息子って居て良かったんでしたっけ。いやキリスト教と混ぜるな危険でしょうけど。隠し子なのか正当に承認されている子供なのか(つまり他の信徒にも周知の事実なのか)は現段階では判りません。

 別パート。非番のレンツ刑事再登場。
 彼の口から、今までヴァルが関わった事件のまとめが語られる。
 世間一般では今までの事件は、全て彼が起こしたテロ行為であると認識されている。そして凶器がまるで謎。刃物や銃ならその手の反応が遺体から出るはずなのに、出てこないんだろうな。…魔法が凶器だった場合、傷口の周りから魔法反応が出たりするんかなあとちょっと考えた。もっともそんなモノを測定出来る機械なんか今ない訳だけど。
 
 で、新キャラ登場。
 「ヴァル=アルヴェーン容疑者の姉のセルマですけど!何か!?」

 …ねいちゃん強えええええええええええええええええ!
 って今読み返して気付いたけど、あんたパンツじゃなくてスカート(しかも深いスリット入り)かよ!それなのにあんなに足広げたりするなよ!女である自覚ないですね。

 成程、こんなねーちゃん居たらヴァルもへたれるわな。奴の性格形成の理由が納得できた。
 性格もキツそうだが、文字通り腕っ節が強そうだ。戸棚を楽勝で持ち上げる事が出来るんだ…。コテンパテンに「ブッ殺す」んだ…ヴァルも今までに散々やられてるんだろうな。
 練習台って…彼女は一体何の職業なんでしょうか。格闘家だったら笑うが、それだったらそう言う方面で取材も殺到してそうですな。体育教師とか?もしかして警察関係者…だったら立場上シャレならんな。犯罪者の身内扱いだから。

 彼女とレンツは合流して「ヴァルが現れる次の事件現場」に行くつもりかな。グードランド南部グランガルズのエルナス領事館で発生中の占拠事件。

 犯行声明もないので聖修道会の犯行かは判らない。しかし魔法を使っているのは明らかなので、世間一般には「聖修道会の犯行」と判別出来なくとも、ヴァル達には判る訳で。

 エルナ達はリョート操る竜に乗って、現場に急ぐ。しかし「エルナ姫達が事を起こせば彼女らを守る訳にはいかない」と法王は言い切ったために、ベリエルは焦る。
 正統修道会も頼れない、孤立無援になるのか。ベリエルはついてきそうだけど他の特務機関の連中は判らんな。ともかく今回から「領事館占拠事件編」開幕ですかね。

 冒頭にも書いたが、編集のミス列挙。
 最初のハシラ「聖修道会すら助けにならない…」っておい。逆だ逆。
 そして今回の作中で「正当」修道会となっている。前回までは「正統」修道会だったはずだが…まさか設定変更か?それとも単純なミス?
 編集、ちゃんと働かなきゃ。

 今回は話を進める目的の話であり、謎解きや謎の提示はなかったので感想は簡素に終了。

第22話「世界樹の記憶」

 3巻3月27日発売告知。多分21話まで掲載かな。
 そして読者コーナーにてベストシーンにスヴァン死亡シーンが2位で選ばれるわ、「恋人にしたいキャラ」でエルナが4位に入るわ。微妙に祭りですよお客さん。もしかしなくても堤抄子ファンってGファン読者の中でそこそこいるんでしょうか。
 恋人キャラ部門は「女性票は割れまくりました」との事だから、男性ファンがエルナを推しまくったか。ベストシーンは、1位は人気漫画が持っていく事が多いが2位は結構割れるからな。しかし人死にシーンにしては地味に流されたと言うのに。

 世界樹の伝説を語るベリエル。現在に伝わっている事はエルナ1内での勇者伝説、そしてエルナ1本編と相違はしないようです。
 エイリークの魂によって世界樹が復活した事はちゃんと伝説になってるんだな。目撃したアーサトゥアルの人間達が伝えたのかな。アトリとかが見てましたが、あの展開を理解出来たんでしょうか。

 魔道書が納められている部屋はセキュリティによってガードされている。世界樹内部も改造されてるもんだな。
 その魔道書に関して色々設定公開。
 エルナスと正統修道会にそれぞれ保管されている魔道書2冊。その内容は別々だった。ちょっとまとめる。

 正統修道会側魔道書:治癒系、防御系、風・水・火炎・使い魔法
 (バルドゥスは正統修道会時代に閲覧済・内容は聖修道会へ流出)
 エルナス側魔道書:雷、氷結、地脈、爆発、転移魔法、(禁呪の核熱魔法)
 (絶対門外不出。エルナスの騎士すら閲覧不可・流出した正統修道会側魔法を使用)

 エルナス側のガードは相当固いようです。騎士ですら閲覧不可だからな。じゃあ舞踏会の対テロ対策として配置されたクレトゥス使える連中も流出物使用か。リョートもねえ…。
 仮にエルナスの騎士が聖修道会の信者になっても、魔法流出はあり得ない。だから聖修道会はエルナスの魔道書をどうにかして閲覧したいと。成程、連中の躍起さが理解出来た。
 そしてヴァルが何故か「門外不出のはずのエルナス側の魔道書にしか載っていない」雷撃を知っている。この事態の異常さもよく判った。「第三の魔道書が新しき世界樹の中に…というのは僕の推測…」「あなたの知らない力が助けてくれているのですよ…」ベリエルは言う。彼はソーロッドがヴァルに魔法を横流ししてる事を知ってるんですかね。

 他に判った事はバルドゥルは「正統修道会の枢機卿→聖修道会設立」と。名実共に聖修道会の教主的立場って事か。他にトップを張れる人材はいなさそうです。信者は増えつつあっても、テロれるような魔法使いはそこまで存在しないか。

 ソーロッドとヴァルの語り。
 「人間のくだらない所も気に入って人間側についているわけだが」とぬかしやがるソーロッド。と言う事は彼は彼の自由意志で動いている、誰かに仕えている訳ではなさそうだ。そして遂に彼はヴァルに敵の名を告げる。

 ………吹き出しの肝心の部分、隠しやがったーーーー!!

 えーとまあ、エストベリの「あんたが敵に回してるのは神だよ」、バルドゥルの「神は再臨する」を考慮すると、普通に考えたら「その名は……神だよ……」と言ってるんだろうなーと言う推測は成り立つんだが。しかしここで台詞伏せる構成にしてる辺り、その推測は正解なのかちょっと考え込んでしまうんだよな。
 つーか「魔法」と言うエネルギーを作り出したのが古の神ならば、「精霊」ソーロッドは神によって作り出された精神体なんでしょうかね。それともアダ戦記みたいに「昔はひとりの人間だった」とか?流石に別作品で同じネタは使わないか。

 ベリエルに「先人は悩み抜いて出来る限りの事をしてきました。その積み重ねで我々は今大地に立つ事が出来る。それが歴史と言うものです」とエルナは言われる。「彼らが一緒に歩いてくれるような気がする」と彼女は思う。過去を考えた。
 ソーロッドは「エルナには守るべき大地や人々のイメージがない」と危惧したが、これによって彼女にそのイメージは付いたかな。
 そしてヴァル。「あんたはやるべきことをその都度指示してるつもりなわけ?」「まあそうだが…」…エルナに対して「未来を考えてた。ひとつひとつやるしかないな――っていうか…」…エルナは過去、そしてヴァルは未来を考えた。
 お互いの考えをまとめるための繋ぎの話か。今回は。リョートの描写がすっかりしかとされてしまいましたが。

 最後、次回への引き。修道会領すぐ傍の在グードランドのエルナス大使館が聖修道会によって占拠。
 エルナを引き寄せるための罠だとは悟る事が出来る。しかしエルナはいつものように「他の人を巻き込めない」と言う。その態度は彼女から変わることはない。そして。
 「よし、行こう」
 …この漫画の主人公はヴァルなのだと今回も確認できました。

第21話「神の実在」

 スヴァンの死。そして一行は正統修道会の大聖堂に到着。エルナ一行、全員へこんだまま。
 てゆーかエルナの人並みの胸で男装は無理だと思うのですがいかがでしょうか。坊さんの振りしなきゃならないとは、エルナ達の逃亡劇は正統修道会の全員が認めている事ではないんですね。

 スヴァンの死を思い出して泣くのはエルナのみ。ヴァルもリョートも最早泣きません。

 大聖堂がある街では「聖ラタトスク祭」を間近に迎えているようです。ってラタ公は聖者様認定されてるんですかい。「1」のメンバーの中で最も似合わんな。この分では聖ラヴァルタ祭なんかもあるんかいな。
 まさかラタ公のみを奉っている訳じゃないでしょうから、様々な聖者様のお祭りが定期的に行われるんでしょうね。我々の現実世界のように国家によって休日認定されるまでに大きな行事だったりして。
 「1」の登場人物達は本当に「2」の世界に伝説として根付いてるんだなあと実感。また、こういう風に生活に根付いた「伝説」だから、ファンタジーにおける伝説とはまた違った印象ですね。地に足をつけた伝説と言うか…「魔法が存在する」「あれは聖剣なんだ」ってのは、「アーサー王伝説の聖杯が実在する」「キリストの聖骸布は本物だ」みたいな微妙なヨタ話なんだろうな。この世界のこの時代の人間にしてみたら。

 ここ2回続けてのリョートの暴走で結果的にスヴァン死亡と言う大惨事を巻き起こした訳ですが、当のリョートはきっちり反省しているようでした。正直意外でしたが、確かに人間ひとり死に追いやっておきながらその感情に全く影響なかったら、お前人としてどうかと、てな感じですしな。
 しかし最早自己弁護の余地はないと言う態度までは意外でした。エルナに対する恋心を「くだらない思い」と切り捨て忘れようとする様は、想像してませんでした。
 ヴァルは全くリョートを責めないようです。とすると前回の「いいよもう」とは本当に、赦しなのかもしれません。小学生時代からの親友なのだから、彼が一番しんどいはずなのに、彼はリョートを責めない。そればかりかエルナを気遣う。
 確かにリョートが「勝てんな…」と悟るのも無理はないようです。
 ヴァルには魔力も腕力も戦術もないが、心根だけは勇者の資質があるようです。そこを見抜いてソーロッドは彼に力を貸す事にしたんでしょう……って今回あのピカチ(ry何処行った。ここはソーロッドの本陣だろうに。

 敵サイド。地下道事件で寄り道したバルドゥルだが本来の用事をこなす。
 ウーロフ博士登場。えーとまあ、ありきたりな表現ですが、典型的なマッドなサイエンティストですな。マッドな宗教家と手を組むには相応しい人材か。
 ちゃんとした研究家ではありそうですが、あまりにマッドなので大学などを追われたんでしょうか。それとも市井の研究家だった所を、そのマッドさを買った聖修道会が資金提供して独自の研究所を持つに至ったのか。
 どっちにしても元々はエストベリからの紹介のようですから、引き合わせたのは彼なんでしょうね。とすると魔精霊の資料は何時から手に入れているのか。聖修道会ではなさそうですね。ウーロフ博士自身が入手した(そしてそれが彼をマッドにする引き金になった)のか、エストベリが渡したのか(この場合魔精霊以前にも何かマッドな事してそうですなあ)。
 魔法研究もしているようですから、これの資料は聖修道会経由かな。

 ちょっと寄り道。エルナの悪夢とそれに対するベリエルとの問答。
 地下道事件のリフレイン、囚われたスヴァンを何とか魔法で助けようとするが結果的に助けられない夢を繰り返し見てしまう。「私が一番力を持ってたのに!」と慟哭するエルナ。
 今回のエルナは自分に力がある事を自覚している。前回のエルナは自分が無力である事を自覚していた。ここで、既に彼女らふたりの立脚点が違う事を示す。

 無力であったエルナはそれでも、シャールヴィがアンサズに合流した中盤、帰るべき場所がある彼を何時までも頼っていられないとして自分の力で旅して世界を救う道を探した。無力なりに自分の力で何とか出来る事を探そうとした。
 が、結局はシャールヴィに「もっと人を頼れよ」「おめーの悪い所は人任せにしないところだ」などと諭される。
 結局は無力な彼女しか出来ないとされていた夢物語――聖剣を抜いて魔獣を倒す事――が現実的な手段となり、それに突き進む事になる。でもその時点では、自分で出来ない所は人任せにして丸投げに出来るようになったんだろう。

 今回のエルナは力を持つが故に、その重圧に潰されそうになる。何せ「勇者エルナ」と養父母がいまわの際に告げた程だしなあ。それ程に彼女が背負っているモノは既にでかいんだろう。
 だが、力があるにせよ、それは有限だ。彼女は無敵ではない。実際、彼女の目の前で起こっている事は何だ。凄惨な殺戮が彼女の目の前で繰り広げられ、そして彼女はそれらを殆ど防げない。養父母も死んだ、列車テロも乗客乗員全員死亡、そして今回のスヴァン。
 力はあるはずなのに、それを防ぐには余りにも小さかったと言う事か。それは「無敵のシャールヴィ」と称されるまでに強かったはずの彼が、アンサズ陥落時に狂戦士の一撃に倒れた際に感じた「俺がもっと強かったら…」と言う悔いにも似るのか。
 今回のエルナは、例えばヴァル辺りに「もっと俺たちを頼れよ」と言われた所で、延々「だって私が一番力を(ry」と返しかねないんだよな。だから前作エルナ以上に逃げ道がなさそうで怖い。逃げ道を作れなさそうで怖い。
 力持つ者の責任を充分すぎるまでに判っていて、自重に耐え切れなさそうで怖い。

 エルナに対するベリエルの説教。すなわち力は有限だ。そして治癒魔法を使う聖修道会へのアンチテーゼ。
 聖修道会は病を治す即物的な宗教で、それだけしか与えない。それは根本的な解決と言えるだろうか?しかし正統修道会(そしてアースムンド)はそんな苦しみを克服する心を与える。それこそが人々に対する救いだと。
 …説教としては充分だろうが、人は即物的なモノに走るのが常だからなあ。我々の現実にてハマる人が多い宗教や似非宗教だって、教義は現世利益が多い。
 「力を尽くした事をお迷いになりませんよう」…力を尽くした以上は仕方がないと言う事だろうか。しかしエルナはその「力」を尽くしたとは思えないから、ああいう夢を見るのではないだろうか。

 寄り道終了。再びバルドゥルとウーロフの問答。
 バルドゥルは母親を亡くした際に「天啓」を授かった。つーかまだ子供の頃ですな。その時に「魔法と言う力が存在する」と言う事実を知ったと言う事は、それから修道士になるべく正統修道会に入信したのか?しかし正統修道会が魔道書を公開しない=魔法を使わせないモノだから、自分で分家のカルトを打ち立てたか?
 他に天啓を訊いた修道士が居るなら、バルドゥルが創始者ではないのかもしれませんが、どうだろう。天啓を訊ける脳内チャンネルを持つ人間が都合よく何人も居るとは限らないような気もするが…。

 が、この「天啓」が、曲者だった。

 「彼らはその時はまだ90億Kmの彼方にいたのですから」

 ………スターピープルキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!!

 いかん、取り乱した。落ち着け自分。
 ともかく「天啓」を受け取る脳内チャンネルは、正に電波受信のためらしいですな。ええ、言葉通りの「電波」。「神」が送信する電子的なアンテナから脳内で波長を受け取ったのがバルドゥル。「神」はこの星とコンタクトを取るためにアンテナから信号を垂れ流しにしていた、それを受信するモノが神が降臨し易い世界を打ち立てようとする。それが聖修道会が目指す魔法文明の再来。…か?
 で、神は降臨ではない。「再臨する」。つまり、この星に昔居た神々。すなわち、暴走したエネルギー工場だった魔獣を廃棄して天空に逃げた「神々」。
 先代エルナ達が魔獣を倒したもんだから、再び戻ってくるつもりですか。先住権を主張するおつもりですか。「神を恨み続けるあなたを越えて、私たちは新しい世界へ行くんだ!」と叫んで魔獣を倒したエルナが浮かばれません止めて下さい。
 魔獣暴走で逃げる→そのまま90億km彼方まですたこらさっさ→エルナが魔獣を倒した事に気付く→だったら戻るかとまた90億kmを逆戻り→ついでだから惑星の住民に電波出して連絡→それをバルドゥルが受信…と言うタイムテーブルになるんだろうか。魔獣の暴走が原因の割にはえらい遠くまで逃げたもんだと思いますが、もう戻らないつもりで遠くに旅立ったのか。
 …て、ちょっと待て。1光年=30万kmだっけ?だとすると光年に換算すると3000光年?いくら光子ロケット開発してたにせよちと遠いな。ワープ理論取得済で、ちまちまワープして旅してますか?でもって、3000光年の彼方って事はエルナ達の惑星も先住民エクソダスから3000年経過って計算になる?計算上それでいいんだっけ?後、光の速度で旅してるなら所謂ウラシマ理論が適用できる状況にせよ、かなりの世代交代は行われてそうだし…うわー考察が一気にSFになったよー。ある意味燃えるけど理論的に大変だよー。
 バルドゥルが受信した「天啓」って、何時発せられた電波なんだろうな。時差あるにせよこの距離はかなり辛いだろ。
 とか頑張って考察したのに、弥勒菩薩の「天空界で修行、56億7000万年の後に如来となりて降臨す」みたいなそんなに待てませんてな伝承的適当な数値だったら泣くぞ。まあSFに走った以上そんな事はないと思うけど。

 何にせよ、ファンタジーがSFにシフトする展開(或いは逆)は時折見掛けるお話であり最早テンプレと言っても差し支えないと思います。
 しかしSFの世界観に「神」を持ち込んだ際、それは本当に科学で量れないファンタジー的代物になるのが多い中、「天啓には時差がありますから」だもんな。あくまでもSFなんだよ。これだから堤抄子は痺れる。
 …魔法の設定もしっかりしてそうですし(ウーロフ博士が研究する程ですから)、もしかしたらエルナ2って「現代社会におけるファンタジーの侵食」ではなく、SFそのものなのかもしれません。今後の展開如何によっては見方が一気に変わるかも。

 今回、話の展開としては敵サイドとエルナサイドとの相対振りが顕著に。
 リョートが友の死も親の死も「人はいずれ全てを忘れる事が出来るといいます」とエルナに語れば、バルドゥルは母の病に触れて「忘れ得ぬ想いというものはあるものです…」と言う。ベリエルの説法において「天空に神などおりません」と展開した後に、バルドゥルの天啓発言。
 堤抄子とは、こういうザッピングが上手い作家だと思ってますよエルナ1の1話から。

 ともあれ単行本としてはここで切れるはず。先月時点では「ここで切れば丁度良かったのに」と思っていたのですが、間違えました。ここで切れたら凄え気になるだろうな単行本派。



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